現 象>前兆現象>異変の前兆があったと考えられています。

Home    現象   名所案内  人名リスト   書籍  珍説奇説  類似現象  隕石亭雉子星  流星音

 ツングースカ異変の前兆                                              



光学異常
日本で今まで発行され た書籍ではほとんどが、ツングースカ異変 の起きた6月30日の数週間前から前兆現象があったと書かれています。日本で発行された唯一まともなツングースカ本のヴロンスキー著「ツングース隕石の 謎」(*1)に前兆現象があったとの記述がある ので、この孫引きなのでしょう。ここでいう前兆現象とは、たぶん「明るい夜」のことだと思います。事件の後に明るい夜などの光学異常が発生しましたが、事件の前の現象についてはほとんど忘れられていました。1960年代初頭に
ヴァ シリエフ(N.V.Vasilyev)と他の科学者たちが1908年夏の大気の異常現象を詳細に分析して、この問題を甦らせました。1963年トムスク医 療研究所の所長の援助でKSE(総合自主探検隊)は存在する国内外の150以上の研究機関・観測所に、1908年夏に記録されたどんな自然現象でも報告し てくれるように求めました。この時期は東西冷戦の頂点のときであり、ソ連市民と外国人との郵便連絡さえも政党と州当局によって厳しく監視されていた中での 野心的なプロジェクトでした。しかし各地の100以上は調査に応じ、KSEが受け取ったデータの一致は信頼性が高いものであると確認できました。更に KSEはいっそうの確認のため1900年代後期の700以上のロシアの新聞・雑誌ばかりか外国の定期刊行物、また1908年夏の船の業務日誌さえも調べま した。
1908年6〜7月の「明るい夜」の目撃地点数のグラフがヴァシリエフ(N.V.Vasilyev)(*3)の論文に載っています。(下図)

                           T(実線):明るい夜の全現象     U(破線):夜光雲                                                             

上の図から、6月23 日頃にはツングースカ異変による「明るい 夜」が始まっているとヴァシリエフ等は考えていたようです。21日から始まっていたと主張する人もいますが、補強証拠は乏しく多くの研究者は27日からと考えています。
「明るい夜」については篠田皎氏が調査され「ツングースカ異変 研究会」と「天界」(*4)で詳しく発表しています。その中でイギリスの有名な流星研究者デニングは29日夜は空が 異常に明るく、星がわずかしか見えなかったことを認めています(*5)。また北の空の一部は赤みがかり、一方東の部分は緑色がかった、と記しています。28日までは空が異常に暗く、これほど銀河が豪華に広がってい るのを見るのは始めて、と記しています(*6)。
大気の光学異常 - 奇妙な銀色の雲(夜光雲)、色鮮やかな薄明、強い太陽ハロ - が観察されたのは西ヨーロッパ、ロシアの西部、西シベリアであった。これらの異常が記録されたもっとも西の地点は英国のBristolのようです。
29日に空が異常に明るかったというのは大気光が強くなったと 考えられます。大気光は主に熱圏下部(高度約100km)の酸素原子の禁制転移による放射ですから、この時 点にすでにツングースカ物体本体を包むガス状の先端部が地球大気に突入していたのでしょうか。あるいはツン グースカ爆発の約7時間前から南極で見えたという異常なオーロ ラに関係するのかもしれませ ん。
「明るい夜」のほかの前兆現象候補としては、1908年の夏の 火球(-3等星以上の明るい流星)が前年と翌年に比べ多かったとあります。(*7) 
確かに他の文献(*8)でも火球の目撃報告が多かったとしてい ます。6月30日以後火球の目撃報告が多くなったように思えますが、しかし統計処理したものかどうかは不明です し、前兆と断定は出来ないように思えます。
もしもツングースカ物体がシューメーカー・レビー第9彗星のようにいくつかに分裂していて、6月23日頃から次々に地球大気に突入していたのかも知れませ んが、今のところそれを裏付けるような記録は見たことがありません。


地磁気の前兆現象
ツングースカ現象の前兆は大気の光学異常によるものだけが一般に知られていますが、地磁気の前兆現象らしきものも記録されていました。事件による地磁気の変化の 中でももっとも不可解な現象で、「ウェーバー効果」とも呼ばれているものです。この報告はドイツ・キール大学の物理学研究所のL.Weberが1908年 7月のAstoromische Nachrichten誌で公表したもので、それによると「連続性のある振動で、2分角の振幅で3分周期であった。6月27日18時から28日1時30 分、6月28日18時から29日1時30分、6月29日20時30分から30日1時30分までの3回記録された(すべて世界時)。 これらの磁気異常は オーロラに伴う動乱ではなく、路面電車からの妨害でもなく、既知の原因ではない。」
KSEの主要メンバーBidyukovは、ドイツでの最初の「ウェーバー効果」はちょうどヨーロッパで「光学の前兆」が見えたその日にあたり、最後の3回 目が終わったのは爆発の16分後であり、我々が判断しえる限りこれ以外記録された類似の効果はなく、これらの事件との偶然の一致の機会はほとんどありそう にない。と強調しました。
(*9)
ま た彼はこの地磁気の振動間隔は正確に24時間、これが何を意味するかといえば24時間の周期をもつ長楕円の衛星で、ドイツで最接近するものであるとしまし た。そのような衛星が強力な磁気の供給源であるならWeber教授の磁力計に影響を与えることになるでしょう。その後この衛星はツングースカ物体となり地 球大気に突入した……
KSEの
ヴァシリエフと同僚達はこの記録原本を捜しましたが、それらは第2次世界大戦中に破棄されたようです。

*1 ツングース隕石 の謎 
    V.ヴロンスキー  中山一郎訳 大陸書房 (原題  クーリックの道―ツングース隕石物語)
*2 Аномалъные сумерки,связанные с Тунгусским метеоритом
       И.Т.Эоткин   Метеоритика 1969
*3 The Tunguska Meteorite problem today
           N.V.Vasilyev  Planet.Space Sci., Vol.46 No.2/3 (1998)
*4 ツングスカ異変に関係した「明るい夜」
    篠田 皎    天界 2001.5 No.912
*5 The Sky Glows
        W.F.Denning    Nature 1908.7.16  Vol.78  No.2020
*6  Genial June
        W.F.Denning    Nature 1908.7.9  Vol.78  No.2019
*7  On the Necessity of International Investigation into the 1908 Tunguska Event
        N.V.Vasilyev   G.Andreev      WGN, the Journal of the IMO 17:4 (1989)
*8 シベリアに於ける隕石研究
    D.F.Anfinogenov & L.I.Bodaeva
*9 The "Weber Effect"and anomalous luminors phenomena in the Earth's atmosphere in the period of the                 Tunguska event of 1908
       RIAP Bullitin  2006,Vol.10  

Top に戻る

Copyright (C) 2002-2011 Kamimura,All right reserved.