ツングースカ爆発の
約6分後から4・5時間局地的に磁気嵐が観測されました。隕石落下に伴なう磁気嵐は観測されたことがなく、ツングースカ異
変に伴なう地磁気の撹乱現象は、大気中の核爆発に見られる現と類似していると考えている研究者もいます。(*1) これも
ツングースカ異変の謎のひとつです。1950年頃から始まった大気中の核爆発実験は地磁気をかく乱し、地磁気の対称地点
でしばしばオーロラに似た発光現象を引き起こしました。1メガトンの爆発で数1000km離れた中部太平洋上にオーロラ上の
発光現象がありました。ツングースカ異変の研究が進につれ15メガトンとも考えられるツングースカ爆発ならば同様にオーロラ現象があった
のではないかとヴァシリエフ(N.Vasilyev)やアンドレェフ(G.Andreev)は考えました。
ちょうど具合のいいことに、1908年には南極点を目指すイギリスのシャクルトン(E.H.
Shackleton)の南極遠征隊(BAE)がロス島のエレバス火山付近(77°34′S、166°09′E)で越冬し
ていました。そのキャンプ地はツングースカとは地磁気の対称点とは正確には言えませんが、遠すぎるというほどでもありませ
んでした。
オーロラと気象の観測担当はD.Mawsonで、彼の記録によると、6月29日までのオーロラは前日までのと
変わりませんでした。30日午前2時50分、BAEの科学部門の責任者 T.W.Edgeworth David 教授は雲
間から非常に明るく大きいカーテン状のオーロラを観測しました。その異常なオーロラは8時30分頃までよく見え、9時45
分頃にはかすかに見えるだけとなりました。
ここで注意することはこの時刻は現地時刻で世界時よりも11時間進んでいることと、BAEの使用していた時計が遅れ気味で3月初旬に正しくセットして7月17日夜には1時間12分送れていたことが判明しましたので、遅れの割合が同じなら6月30日には1時間と1分くらい遅れていたのではないかと考えられます。したがってツングースカ爆発の時刻はBAEの時計で
は10時15分くらいになるのでしょう。南極で見えた異常なオーロラはツングースカ爆発の約7時間前から見え始め、ツン
グースカ爆発の時刻とその後の2時間はオーロラは観測できなかったのです。
D.Steel はツングースカ物体はエンケ彗星と起源を同じとする彗星で、そのイオンの尾が彗星の核が大気に突入する前
に入り地磁気との相互作用でオーロラが発生した可能性を指摘しています。(*2)
彗星の尾と地球が接触した過去の事例では1861年6月30日夜の空は黄色がかってオーロラのように異常に明るいという現象があり、その時地球は1861
U彗星の核から0.15天文単位(月までのの約60倍の距離)で尾を横切ったそうです。
*1 On the
Necessity of International Investigation into the 1908 Tunguska
Event
N.Vasilyev &
G.Andreev WGN, the Jounal of
the IMO 17:4(1989)
*2 Auroral observations in the Antarctic at the time of the Tunguska
event, 1908 June 30
D.Steel & R.Ferguson
Aust.J.Astr., Vol.5(1)
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