現 象>地磁気の異常

Home    現象  名所案内  人名リスト   書籍  珍説奇説  類似現象  隕石亭雉子 星  流星音

  地磁気の異常                                              



1958年アメリカは 太平洋ジョンストン島で高層核実験を行いました。高度42kmと78kmで夫々3.8Mtの核融合爆発でした。アメリカの地球物理学者は予期しない発見を しま した。この核実験は局所的な地磁気嵐を約1時間発生させたのです。すぐに科学者達はこの効果の原因を明らかにしました。核爆発の火の玉は高温のプラズマか ら成っていて、中性子放射エネルギーの増加とともに、強い放射線α、β、γ線を作り出し、放射線の影響を受けた帯電した粒子が電離層内に増加し電流が流れ 磁気の乱 れが発生する、というものです。後に核爆弾が大気中で爆発さえすれば、このような効果が発生し、地表面での巨大な爆発があっても地磁気の場は変化しないと いうことも分かりました。

核爆発による地磁気の 変化を気付いたのはアメリカの科学者だけでなく、ロシアのイルクーツク地球物理学観測所の若い地球物理学者 Kim Ivanovも高高度の核爆発により生じる人工の地磁気嵐に気付きました。また彼等とは無関係にITEの隊員達も地磁気嵐のデータを探していました。彼等 はまだSF作家カザンツェフによる仮説「高度制御宇宙船」の破片を探そうとしていました。核の地磁気嵐について情報を得た彼等はツングースカ事件とその後 の地磁気の状 態に関する情報を捜し始めました。1959年、ITEのプレハノフとヴァシリエフは1908年に機能していた各地の地球物理学の観測所に問い合わせ、18 の磁気測定局と磁気観測所からの回答を得ましたが、彼等にとって全くの期待外れでした。1908年6月30日の各観測機器の記録には乱れはなかったので す。
しかし、1960年2月1日、プレハノフのもとへイルクーツクから厚い小包が届きました。Kim Ivanovが捜しだしたツングースカ爆発後に続いた地磁気の場の乱れを示す記録感光紙でした。それはプレハノフと同僚達に大きな衝撃を与えました。

tijiki1908 年6月30 日、イルクーツク地球物理学観測所の測定機器に記録された、地磁気の変動。

Zhuravlev.V.K Zigel.F.Y
The Tunguska Miracle:History of Investigations of the Tunguska Meteorite. 1998

1[T](テスラ)=10^4[G](ガウス)、1[γ]=10^-9[T]


その記録の詳細は、世界時0時20分、つまりツングースカ物体が爆発を起こした6分後、地磁気場の水平成分(H)が突然4γ上昇し、約2分間その値を保持 し、その後また上昇を始め18分かけて更に20γ上昇した。次の14分間 H成分は同じ強度を保ち、0時36分下降の局面が始まった。1時間41分でH成分は67γ下降した。最終局面はおよそ2時17分から3時間、5時20分に元に 戻った。
地磁気場の垂直成分(Z)も同じく変化したが、H成分よりも早く3時20分に通常の値に戻った。
磁力計は磁気偏差の変化を示さないように見える。Kim Ivanov とロシアの地球物理学者 V.I.Afanasieva は地磁気の通常の日変化に注意を払い、磁気偏差(D)の変化を発見することができた。それによると磁気子午線が西に10′外れていた。その状態が5〜6時 間持続した。

 こ の資料を分析するた めにITEから招待されトムスクに着いた地球物理学者 Alexander Kovalevsky によって非常に詳細に調べられ、1958年アメリカの科学者によって記録された高高度核爆発によるそれと、1908年イルクーツクで記録されたデータは本 質的に全く変わらないという結論に達しました。曲線の形、相対的な持続時間、振幅など様々な局面は実質的に同じだったのです。

Kim Ivanov も同じ結論に達しましたが、彼の論文ではデータを示し説明しただけで、結論は述べませんでした。それは、あまりに異常で重要な記録だったからです。つまり 1908年6月30日の磁気嵐は非常に局地的な現象で、イルクーツクでしか記録されなかったということです。この地磁気嵐とツングースカ現象を結びつけた くない人達は通常の太陽フレアによる磁気嵐と説明しますが、それは局地的に観測されるものではなく、全世界の観測所で観測され、通常数10時間以上持続し ます。

またツングースカ物体 を彗星と考える科学者達、たとえば Grigory Idlis と Z.V.Karyagina は電離層がツングースカ彗星の尾、またはその核が爆発し生じた高温の火球により影響を受けたと説明しました。しかし彗星の尾は地球を充分包囲するだけの大 きさがあり、地磁気の嵐は全世界的に発生するでしょうからこの説明はすぐに他の科学者達から指摘されました。また、たとえ彗星の核が爆発して高温化したガ ス -プラズマから成る火の玉を形成したとしても、ツングースカ爆発の高度10km以下ではプラズマは数分以内に再結合し消滅し電離層に影響を与えることは出 来ないことを Kim Ivanov は証明しました。

そのKim Ivanov は電離層の熱イオン化が原因で、電離層の一部でも6000〜7000度まで加熱すれば地磁気に乱れが発生するが、ツングースカ爆発の爆風により加熱された と考えました。しかし、地球物理学者 Alexey Zolotov は数学的と、核爆発の直接的測定値からツングースカの爆風がそれほど熱くないことを論証しました。強力な核爆発の爆風でさえも爆発の中心から1.5kmで 6000度であり、その温度は距離により非常に早く減衰します。従って電離層においてツングースカの爆風の温度は200度を超えなかったでしょうし、それ で は熱イオン化のためには全く不十分です。

2003年のモスクワ での「The 95th Anniversary of the Tunguska Problem」会議でKim Ivanov は、ツングースカの爆風それ自体が地磁気に影響を与えなかったであろうことに同意しました。爆発現場上の電離層のイオン化の増加が必要でしたが、彼は「こ の増加したイオンの源は知られていない」と述べました。

結局、地磁気の嵐には 強力な放射線が必要ということでしょうか、つまりツングースカ爆発は核爆発? 謎のままです。

 

Copyright (C) 2002-2011 Kamimura,All right reserved.