現 象>熱ルミネセンスの異常

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  熱ルミネセンスの異常                                              


 


KSE の創設理由の一つはSF作家のカザンツェフ(Alexander Kazantsev) の宇宙船仮説を確認することでした。カザンツェフの宇宙船は核動力を使用しており、ツングースカ爆発は核爆発というものです。その証拠になる宇宙船の破片 は発見できず、KSEは次第に宇宙船仮説を捨てることになるのですが、それでも放射能の影響と思われる遺伝子の突然変異現象などがあることから放射能の測 定に取り組んできました。そのひとつの方法としてワシリエフ(Vasilev
,N.V) は1960年に熱ルミネセンスを使うことを思いつきました。

熱 ルミネセンス法とは岩石の年代決定のため地質学や、古代の窯業の年代を定めるため考古学で既に使われていました。鉱物の中には強い放射線にさらされると、 放射エネルギーをそれらの結晶の格子に蓄えます。その鉱物が徐々に加熱されると、蓄えたエネルギーを開放して光を放射するようになります。温度と放射光線 強度の間の関係を分析すると、鉱物の地質学上の歴史に関する情報をもたらします。つまり古代の陶磁器が発見されると熱ルミネセンス特性が調査され年代が決 定できます。逆にそのような物体の時代が知られているならば、その歴史の間に得た放射能量を決定することができ、広島において陶器の屋根瓦の熱ルミネセン ス・レベルを測定することにより投下された原子爆弾による放射能を測定することに役立ちました。

ワ シリエフがツングーススカで熱ルミネセンス法を使うことを思いついたもののツングースカ地域で遊牧しているエベンキ族は陶器を所有していることは殆ど無 く、そのためKSEの研究者達は自然の熱ルミネセンス指標である石英と長石に対象を定めました。しかし、実行するとなると陶器と違い自然の鉱物には放射性 元素、地球内部の熱、太陽の紫外線、核実験による影響などで熱ルミネセンス特性は非常に不安定で、良い結果はなかなか得られませんでした。

Boris Bidyukov はこの問題を解決するため数100ものサンプルから4つのモデルを作りました。その結果、ツングースカ爆心地から10〜15km以内で熱ルミネセンス強度 がバックグランド・レベルを非常に超えるということを発見しました。また強化された熱ルミネセンスの区域の対称軸はFast により2番目に求められたツングースカ物体の軌道(ほぼ東から西)と一致することが分かりました。しかし、異常に強化された熱ルミネセンス区域とは別に、 約5〜6kmの半径で熱ルミネセンス・レベルが減少している区域があり、その境界は木の火傷区域の境界とかなり一致します。おそらく熱ルミネセンスの減少 はツングースカ爆発の閃光で発生したが、増加した熱ルミネセンスの原因は何か?

自 然界では鉱物の結晶格子中にはエネルギーが徐々に蓄積されます、しかし核爆発にさらされるとその量は突然増加します。このような鉱物が紫外線にさらされる と自然に引き起こされた熱ルミネセンス効果は迅速に減少し、その鉱物の典型的な最低レベルに落ち着きますが、人工的に引き起こされた熱ルミネセンス効果の レベルは変化しません。
Bidyukov はツングースカのサンプルとツングースカ大災害地域からはるかに離れた場所のサンプルを紫外線にさらし、調べました。その結果、紫外線はツングースカのサンプルには熱ルミネセンスに影響を及ぼさないことを確認しました。(*1)

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Fig.1 ツングースカ地域のOstraya山麓で得られたサンプル(No.409)の試験結果
    S:熱ルミネセンスの強度T:温度(℃)
    a:紫外線を放射したサンプル  
    b:紫外線を放射しないサンプル(変動の上限)
    c:
紫外線を放射しないサンプル(変動の下限)
    d:始めに焼鈍し処理(2時間)してから紫外線を放射したサンプル (その鉱物特有の熱ルミネセンスの最低レベルに相当)

Fig.2 クラスノヤルスク地方のBelyaki村で得られたサンプルの試験結果。

Fig.1と2 の a の曲線と b・c の比較は、普通に解釈すればツングースカ爆発が激しい放射能を伴っていたことを意味するのでしょう。

*1  The thermoluminescent imprint of the Tunguska event
       Bidyukov,B.F   RIPA
Bulletin,1999,Vol.4,No1-2 

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