現 象>チェコ湖>はたしてツングースカ物体の衝突クレーターでしょうか

Home    現象   名所案内  人名リスト   書籍   珍 説奇説  類似現象  隕石亭雉子星   流星音

 チェコ湖はクレーターか                                              


ツ ングース カ爆発の爆心地から北北西に約8kmの所に小さな湖があります。長径が約1kmで腎臓に似ているともいわれています。
この湖がツングースカ物体による衝突 でできた可能性があるとの論文がイタリア・ボローニャ大学の
G.Longoらの研究者らによって
発表されました。(*1)
1999年から調査を始め少しずつ論文が発表されましたが、今回そのまとめともいうべきものが発表されたという訳です。私もこのWebの 「Kagarlyk隕石との関連」でチェコ湖からツングースカ物体の破片が見つかるかも知れないと記しましたが、湖そのものがクレータとの可能性はないと考えていました。
チェコ湖はツングースカ調査の初期からその生成が謎とされ、1928年以前の地図にも記載されず、1908年以前に存在していたかどうかも不明です。ツン グースカ事件とチェコ湖の関係に関しては1960年代の調査で、湖底の泥の堆積物の厚さが約7mで、湖の年代は5千年から1万年ということで否定されてい ます。
クーリックの時代には白鳥が住み着いていて、「白鳥の湖」とも呼ばれていたそうです。私たちが訪れたときも水鳥が湖面を泳いでいました。夕暮れの迫る空 と、青く澄んだ水面は印象的でした。

G.Longo等は新しい地球物理学データに基づいて、湖の堆積物のコアから湖がそれほど古くないと反論し、次のような仮説を作りました。 チェコ湖は楕円形でその長軸は125°です、これは現在ツングースカ物体の飛行経路の方位角として最も有力な説の97°〜127°の範囲に入っています。 しかしチェコ湖の長軸を延長しても爆心点からは数km離れています。これはツングースカ物体が飛行途中で爆発分裂しその破片は本体よりも少し北に飛び出 し、さらに飛行を続け地面に衝突しクレータを作り、キムチュ川とつながりチェコ湖になったというシナリオを描いています。イタリアのグループの調査した湖 の断面図はオデッサ隕石クレータ(アメリカ・テキサス州)に類似していて、シベリアでよく見られるサーモカルスト湖とはまったく違っていると説明しています。
また
低周波の地震波による鮮明な反射波で湖中心の底に衝突物体の破片か、それにより圧縮されたような物体の存在が明らかになりました。あとはボーリングしてこの物体を取り出しさえすればいいとの考えでその後調査が行われました。しかしまだ肯定的な結果は発見されていないようです。

G.Longo等はチェコ湖とオデッサクレータが類似しているとしていますが、そうでしょうか。オデッサクレータは約63000年前に形成されたチェコ湖よりも少し小さい直径170mもので す。そしてクレータの縁は衝突クレータ特有に4mほど隆起しています。チェコ湖には縁の隆起は見られません。これはチェコ湖がツングースカ物体により約 100年前に形成されたなら当然その形跡があるはずです。またチェコ湖の周囲からは1908年前から生育していた成木が多く見つかりました。激しい衝突で 幅300mの孔を作り出しながら近接した木々に影響を与えることないということがあるでしょうか。またチェコ湖を楕円と仮定するとその楕円率は4/3から 5/3となりこのような楕円を作り出すには地表に対して非常に斜めに(<10°)衝突しなければならず、ツングースカ物体の破片で形成されたなら爆心地と 爆発高度(5-10km)から30-50°ということになります。この角度で高速衝突ではほぼ円形のクレータが生成されることになります。低周波の地震波 による鮮明な反射波は衝突物体を意味するなら非現実的な大きさで堆積岩起源のほうが可能性高いでしょう。

この問題に決着をつけるには正確な湖の年代を確立することでしょう。

 *1  A possible impact crater for the 1908 Tunguska Event
      L.Gasperini, F.Alvisi, G.Biasini, E.Bonatti, G.Longo, M.Pipan, M.Ravaioli and R.Serra

Copyright (C) 2002-2011 Kamimura,All right reserved.