現象>ツングースカ・バタフライ>倒木のパターンは蝶が羽を広げた形でした

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  ツングースカ・バタフライ                                              


 

1.森林に浮かび上がる蝶
ツングースカの謎に惹かれた自主総合探検隊(KSE)の大きな成果のひとつが、ツングースカバタフライでしょう。ツングースカ異変による森林の破壊された 境界が蝶の形に見えることから名付られました。それまで研究者たちは森林が破壊された領域は爆心から4km以内と考えていました。それが全翼長70km、 胴体長55kmという巨大な鷲が翼をひろげたような蝶に似た形が現れました。蝶というより蛾のほうが近いのではないかと思いますが(生物学的議論はおいと いて……)。ツングースカ大災害による破壊された森林と倒木の完全な地図を作成するための探検は1961年に始まり、1963、1964、 1965、1968、1969、1971、1977、1978年と1979年まで続きました。参加した人数は122人ということです
爆心点を正確に求めるため650の正方形区域の倒木60000本の方向が測定されました。ツングースカバタフライの図は1964年に論文で発表されました。ファスト執筆者はW.G.Fast の他A.P.Boyarkina、D.V.Demin、I.T.Zotkinです。1966年にはFastの学位論文「ツングースカ隕石の爆風に起因する破壊区域の統計的構造」が提出されました。これは世界最初のツングースカ事件による学位論文となりました。
破壊された森林の特異な形が明らかになると1949年にKrinovが発表したツングースカ 物体の南東−北西の経路(左図の矢印)に異論が出て、東南東−西北西説が有力になりました。同じ区域の倒木でも倒れた方向にはバラツキがあり、統計処理を 行うことによりひとつの規則性が表れてきました。倒木方向の分散程度は爆心地からの距離に関係するというものです。この関係は1960年以前にDemin が気付いており、Fastをリーダーとするグループにより確認されました。この関係は爆発の起きた高度が数kmとすると理解できます。爆発源の下に働く力 のベクトルは垂直方向で、木の枝は完全に剥ぎ取られrれた「電信柱」と呼ばれる木が見られます。爆発の源から木に加わった力の構成は、一部は垂直方向で、 この力は除外し水平方向の力が木を倒しました。爆心地に近い地帯の「電信柱の森」では水平方向の力は非常に小さく、それより遠くなると大きくなります。力 の水平方向の要素がより大きくなると規則正しく秩序ある倒木の方向になります。  

 

 
 

2.Fast のバタフライ

fastFastは倒木の方向を統計的分析し、分散の同じ値を結ぶとそこにも「蝶」の羽の形が繰り返し表れました。  (左の図)
Fastはこの左右対称軸をツングースカ物体の経路と結論するとともに(A-B)、倒木方向の延長の交点から爆心点を推定しました。しかし、何故このよう な複雑な形になるかについては明確にしませんでした。Fastは物理学者ではなく数学者であるという自覚が強くもっていました。それで倒伏された森林の統 計的状況を厳密に記述したが、数学者が得られた結果からツングースカ事件の物理モデルやツングースカ物体の性質や起源についての仮説を出すべきでないと考 えていました。
そのためFast自身は「爆心点」という言葉を避けていました。この特別な地点は森林倒伏地帯の特性のうちひとつの抽象的概念であると主張していました。しかしKSEの同僚達はFast一流の厳格さを冗談にしてこの場所を「epifast」と呼ぶようになりました。

(驚くことにこの名前そのものは定着し、様々な研究者により提案された異なる場所のツングースカ爆心地点は「epi−」を研究者の最初の姓に加えて呼ばれている)
 


 
3.Zotolov の分析によるバタフライ

 zolotov

   Zolotovによるツングースカ爆発の倒木の解析

B−A :Zolotovによるツングースカ物体の経路
D−C :
Krinovによるツングースカ物体の経路
1-3 :
球状の爆風により放射状の倒木が著しい地域
4-5 :
爆風と弾道波の合成波の影響が著しい地域
6 :
爆発波の前面
7 :
爆発時の弾道波の前面
8 :
爆心地から25kmの爆風と弾道波の合成波前面
9 :
放射状倒木のはっきりした境界、倒木の対称軸
10 :
倒木、方向の延長が爆心地を通る
11 :
倒木、方向が爆心地からそれている
12 :
軸9に対象となる倒木



「蝶の形の倒木地帯」の詳細な物理学的分析はA.V.Zolotov によって最初に行われました。彼は倒木のベクトル図を分析して円錐の弾道波と球状の爆発波の合成によるものと結論しました。そして、弾道波の円錐形の角度 から、ツングースカ物体の速度は爆心地から 18kmまでは1〜2km/secとしました。つまりその程度の運動エネルギーでは破壊のためには不十分ということになり、爆発は原子力エネルギーである と考えました。Zolotovの計算はFastの爆心点とツングースカ物体の経路については一致しました、しかし宇宙船の核爆発という結論になったのは倒 木方向の測定誤差の処理方法に問題があったのでしょうか。 

 

4.Anfinogenov のバタフライ
 
Dhon
John.F.Anfinogenovは営林の航空写真に異なる世代の森林の違いがはっきりと写っていることに注目し、破壊された森林の輪郭を求めまし た。500k?uの広さの完全に破壊された森林の領域の形状はツングースカ爆発の最も本質な特性を示していると考えられています。
「Fast の蝶」は爆心地の西側も倒木が切れ目なく続いていると仮定して、形状を描写するときに滑らかになるようにしましたが、この仮定は間違っていました。そこで は生き残っている木々と、「電信柱」状になった木々が帯状に混在し、西から爆心地点まで達しています。「Anfinogenovの蝶」は明らかに形状に切 れ目があり、その対称軸も
「Fastの蝶」と一致しませんでした。しかし「Anfinogenovの蝶」の発表から数年後Fastは倒伏された森林の追加された資料を使って研究し対称軸を改良する処理法を発見しました。その対称軸は事実上、東から西で「Anfinogenovの蝶」のものと良く一致しました。

Anfinogenovは この形を説明するには隕石の落下角度を40-50°と見積、TNT火薬8Mtに相当する最大エネルギーは高度5〜7kmで生じ、エネルギーの放射 は 2〜4kmまで生じたと決論しました。とはいえ彼は森林破壊が爆風ではなく、鉄隕石による運動エネルギーによって引き起こされたと考えました。彼は鉄隕石 が30km/secの速度で地表に対し 40-50度の角度で飛行した結果、紡錘形の弾道衝撃波が発生し森林を正確に放射状になぎ倒したと考えました。そして隕石そのものは分裂し、破片は 「epifast」から北西に約5km離れたところに落下したと発表すると、友人たちは即座にその領域を「epijon」と命名しました。
KSEの隊員達は
「epijon」とその近郊を捜しましたが隕石の破片は発見されていませんし、40-50度の急角度で飛行したというのは目撃者の証言とはまったく合いません。「Anfinogenovの蝶」を作った別の解釈が必要です。
 

5.Zotkin と Tikulin のバタフライ

Zotkin

I. T.ZotkinとM.A.Tikulinは実験により理論を補強するため、1966年からモデル実験を始めました。彼らは導火線とその端につながれた爆 薬の球形のカートリッジで弾道波と爆発波を再現しようとしました。導火線の角度と爆薬を変え非弾性の金属の木で模した森林の上で爆発させツングースカバタ フライを再現させました。
もっとも良い類似は導火線の角度が30°でカートリッジの爆薬発力が導火線の4倍のときでした。
一時はこれでツングースカバタフライと森林倒伏は全て解決できたと思われましたが、
前項Anfinogenovらの調査で爆心地の西側には倒木領域が小さく、実験結果と一致しないことが判りました。またツングースカ物体の飛行経路の傾斜角は10°前後が有力で30°というのはAnfinogenovの見積もり同様ありえない数字です。…残念!。      

 

 

 

 

  
Zotkin2

ZotkinとTikulinの歴史的な実験で表れた
バ タフライ。
実際のツングースカバタフライとは一致しま
せんが、このような実験を行ったことは賞賛
されます。

    








6.複数爆発説バタフライ

ツングースカ物体が落下中にいくつかに分裂していると考えている人もいます。倒木角度の等値線が爆心地から放射状に真直ぐに延びないで大きく曲がっている部分があります。ここに二次的な爆発が起きた可能性が指摘されています。左の図には5つの爆心点の可能性が描かれています。1がFastの爆心地で、これに2と3の爆発が加わることによりバタフライの形の森林破壊が起きる可能性が指摘 されています。
しかし、これも
最も本質的な形状をしているとされている 「Anfinogenovのパタフライ」とは合わず。KSEが最初に発表したツングースカバタフライの形状から推定したものでしょう。

               

 

 

 



 

 
1- 4: Тунгусское Диво
В.К.Журавлев,Ф.Ю.Зигель
5: SIMULATION OF THE EXPLOSION OF THE TUNGUS METEORITE
     Zotkin.I.T & Tsikulin.M.A    SOVIET PHYSICS-DOKLADY  Vol.11 No.3 1966 *
6:
О Природео-космических причинах Тунгусскойкатастрофы
    И.В.Шаламов

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