隕石亭雉子星

Home   現象  名所案内   人名リスト  書籍  珍説奇説  類似現象  隕石亭雉子星   流星音

           吊るし雲                                              



建 設業を営む友人の、渡辺昇平氏がその現場にいたのは11月としては暖かい午前だった。従業員のS君が叫んだ。
「親方!UFOだーー」
S君が指差すほうに、円盤を三つ重ねたような雲が三つ並んでいる。
 

1999年11月25日午前11時前、私の勤務先に電話があった。
「地震雲というのは、どんなだったかなー」
渡辺氏からだった。自宅兼事務所から数kmのところにいるのだが、円盤状の雲が 三つも出ているという。
地震雲というのが本当にあるのかは疑問だが、たしか帯状で地平線に平行に発生す ると言われていたんじゃなかったかな、それはレンズ雲だろう、と言いながらも窓から空を見るが、30kmほど離れた長岡市の空は別段変わった雲はない。 が、電話をしてくるくらいだから、よほど変わった雲が出ているのだろう。
「写真をとってくれ」
「いまカメラは持ってない」
「コンビニにゆけばレンズ付フィルムがあるだろ」
「解った」
とはいうものの、コンビニエンスストアなどという気の利いた店があるような場所 ではない。
急いで事務所に帰り撮影したのが下の写真である。時間が経っているのでかなり形 が崩れてしまっているというが、
異様な雲だということは判る。層積雲の変形種・吊し雲ということになろう。S君 が叫んだときに撮影していれば、日本気象教 会のカレンダーに採用されていたことは確実だろう。

 

       珍しい吊し雲   渡辺昇平氏 撮影(自宅付近から)        

天気図を見ると日本列島をはさんで 低気圧が二つあり、日本海の低気圧に向かって南よりの風が吹きこみ日本海側はフェーン現象気味で、私の家の庭で最高気温22.1℃(13時20分)であっ た。
(渡辺氏と拙宅とは100m位の距離)前日よりも8.2℃高く、翌日は11.7℃も下がった。 この場所にいちばん近い
アメダス小出の気温変化は次のようで、風はこの時間帯は南西方向の1m/s以下のほぼ静穏状態であった。

1時  2時  3時  4時   5時  6時  7時  8時  9時 10時 11時 12時 13時 14時 15時

9.0   9.2  9.3    9.1  8.6  8.0  7.5  8.0  10.3 12.9 15.6 17.2  20.3 19.4 19.4    

                                                                    

fo   

天 気図(日本気象教会発行「気象」2000年1月号より)     輪島のステュ―フェ図(ワイオミング大学大気科学教室のWebより)

右 図のステューフェ図は高層気象の データ表現方法のひとつで、縦軸に気圧(hPa)、横軸に温度(℃)で、太線は左が露点温度、右が気温。日本時間9時の輪島のデータである。地上から 900m付近までと、2500mから3000m付近は湿潤であることが判る。更に右に記されたSHOWの値が4.25であるので大気全体としては安定とい うことになる。(こういうデータを気象庁はWeb上で公開していない!)
700m以上で30ノット以上の南西―西の風となっている。この雲が見られた地域の南西方向には350〜380mの
山が連なっている、これにぶつかった気流が風下に波を作り、波の山の部分で湿潤空気が上昇し雲を発生させたのであろう。山にぶつかった気流の波は山の高さ の数倍の高さに及ぶが、波長、波形などは山の形や大気の状態で
複雑に変わる。この珍しい吊し雲を発生させた気流の波はかなり複雑そうで、その発生過程は非常に興味深い。

Top に戻る