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「日 蝕・月蝕」が本来の使い方といっても世の中の流れに逆らわないで、私も「日食・月食」と使おう。「食」の天文現象は日食・月食だけでなく惑星食、恒星食、 小惑星食など月がいろんな星を隠す現象(こういうのを掩蔽現象とも言う)があるし、惑星や小惑星が恒星を隠す「星食」もある。月の縁が恒星をぎりぎり隠す かどうかという条件の観測地からは「接食」となり、月の縁の凹凸で恒星が消えたり現れたりして月の縁を通過して行く印象深い光景となるそうだ。小惑星が恒 星を隠すときに南北に離れた何箇所かで恒星の潜入時刻、出現時刻を測定することにより小惑星の形状も推測できる。 また月や惑星・小惑星の運動を正確に求めるためには先ずその位置を正確に求めなければならないが、正確な位置が判っている恒星との接触でそれが可能にな る。これらは専門家だけでなく高度な技術と機材を持つアマチュアも活躍している。 私
は、というとかなり昔に、中越地方から見てギリギリ月の縁を恒星が通過する、「接食」の予報が前年の暮れに発刊された天文年鑑に載っていた。その年に起き
る接食で一番明るい恒星によるもので、これは観測しなければならないだろうと思い、詳しいデーターを海上保安庁水路部編暦課に求めるとすぐにコンピュータ
からプリントアウトされた予報データーがドサッと届いた。そのデーターを基に5万分の1の地形図に接食となる限界線
を書き込むと、自宅から1km以内の所を限界線が通るということが分かった。本当に限界線上で見ると月の縁ギリギリで星が通過してゆくか、あるいは完全に
隠れる時間があるか、それとも月の縁をかなり離れて通過してゆくのか、予報がどのくらい信頼できるのか確認しようと張り切った。 見ていちばん興奮する「食」はなんと言っても皆既日食で、皆既中にだけ 見えるコロナの美しさは例えようがなく、先人が「人間が見ることの出来るもっとも美しいもの」とか「天使の翼はきっとこういうものだとしか言いようがな い」と記したが、まさにその通りだと思う。 皆既日食の次に美しい食はなんといっても金星食だと思う。この2つは肉眼で見ても美しい、と言うより肉眼で見るのがい
ちばん美しいのかもしれない。1989年12月2日の金星食は最も印象深い天文現象のひとつになっている。その日は土曜日であったが勤務日で、就業時間の終了時には金星はもう月に隠れているので早退することにした。16時に退社して空を見ると雲が早い速度出移動し、雲間から月が白く見え、はやくも金星が月の東側に寄り添い、これほど金星と月が接近
しているのは初めて見た。すぐにでも食が始まりそうな接近ぶりだった。焦って帰宅すると空は快晴になっていたが、翌日の町長選挙投票日を控え町中は騒然としていた。おまけに近所で井戸掘りをしていてボーリングが家を揺らし、ドーム内で望遠鏡を見るどころでは
ない。幸いにして17時で井戸掘りは止めてくれたが、選挙運動はいよいよ絶叫調となった。
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