隕石亭雉子星>ブルーベリー

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           ブルーベリー                                              



ブ ルーベリーが実をつけているのを見るとツングースカを思い出す。ツングースカ異変地域に実際に行ってみて驚いたことや想像外だったことは多かったが、ブ ルーベリーもそのひとつだった。到着した時点では分からなかったのだが翌日午前にクーリックの小屋から近いストイコヴィッチ山へ行く途中ロシアの参加者か らブルーベリーを食べることを勧められた。よく辺りを見渡すとクーリックの道に沿ってもいたるところでブルーベリーが実をつけていた。またハイマツも沼の周辺でよく見られた。ジンを連想させる爽やかな香りがあり、これも疲れを癒してくれてツングースカ は良い所だと思う理由のひとつになった。
シベリアは早朝は寒いものの日が昇ると気温は急上昇する。のどの渇きを癒すのは 水筒の水だけと思っていたのが思いがけない贈り物だった。異変地域にいた間は毎日10数kmから20km歩き回ったのだが、どこでもよく見かけ歩きながら もいで食べていた。

調査の初日の夕方(といっても陽はまだじゅうぶん高いが)ブルーベリーを取ってきなさい、とロシア人女性の参加者から 命令され、調査から帰ってきたばかり で疲れているのにと、ブツブツ言いながらもいっぱいもいだ来た。それを潰して砂糖を加え、お湯を注いでおいしい飲み物にしてくれた。これに味をしめた日本 人3人は酒にしたらもっと旨かろうと、行動力を発揮して再びブルーベリーもぎに向かった。ブルーベリーの実に付いているであろう天然酵母による自然発酵 で、美味しい美味しいブルーベリー酒を作ろうというのである。もいできたブルーベリーをウォトカを 少量注いで消毒、それからタッパーに入れてスプーンで潰して…女性陣のところへ砂糖をもらいに…何に使うの、の疑惑の眼差しを撥ね退け、これぞ正しく密造 酒作り!!だが、作っているところをアンドレィフに見つかってしまった。出来たら飲ませるからと、口止めして一安心。砂糖を混ぜたあとは小屋のストーブの 傍で発酵させることにした。このストーブの煙突が過熱して屋根が少々焦げてしまった。危うくクーリックの小屋を火事にした日本人と、歴史に残るところ だった(KSEは歴史的建物に配慮してかクーリックの小屋での生活は禁止していたという。それでこの小屋の周囲にテント村が設営されたという)。

まるで科学実験をやっているようで大いに盛り上がり、ツングースカで天然酵母によるブルーベリー酒を作ったのは我々が 世界で最初であろう、これは是非学術 論文にして発表すべきだ。日本醸造学会に論文を出そうではないか、などと大風呂敷をひろげた。
ところがなぜか発酵しない、もう少し様子を見ようと数日が過ぎ、とうとう明日はツングースカを離れるという夕方になった。この夜の夕食は、さよならパー ティーというかスペシャルディナーであった。参加者はまじめな人が多くウォトカを持参していてもツングースカ初日のセレモニーの乾杯にほんの少々飲んだだ けだった のだが、この夜だけはという訳でレストラン・ツングースカ・グルメでの夕食にはありったけのアルコールがテーブルに並べられた。皆の酔いが少し回ったとこ ろで我々の失敗密造酒「ツングースカ・リキュール」も ウォトカで割って提供した。こう やって飲むと結構美味しく好評であった、と思う。
普 段まじめな顔をしている主催者の医学者ヴァシリエフ、地球化学者のカレェスニコフも酔っ払うとただの気の好いおじさんに変身していた。この夜に一段と嬉し かったことがある、翌9日が誕生日の私のために、画家のリュドミラさんが3日前に描いたチュルギム滝の絵をプレゼントしてもらったことだ。

今 では我が家の庭にも7本のブルーベリーの木があり、毎年実をつけている。どれがハイブッシュ系でラビットアイ系か分からないが、どれもツングースカで食べ たような懐かしい味がする。

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